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三 国 志

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〇〇三   潁川の戦い





潁川(えいせん)




「黄巾賊め、この潁川に全軍を集結させたようだな」
皇甫嵩
(こうほすう)


「ここで決着を付けられてちょうどいいじゃねえか。
おかげであちこち行かされなくて済むぜ」
孫堅
(そんけん)


「行くぞ! この名族に続けえええい!!」
袁紹
(えんしょう)


『兄者、官軍が突撃してくるぞ!』
張宝&張梁
(ちょうほう&ちょうりょう)


「飛んで火にいるなんとやらだな。お望み通りに火をくれてやろう。
走れ! 業火よ!」
張角
(ちょうかく)


「何ッ!? 火が燃え広がったぞ! これでは近づけん!」
皇甫嵩
(こうほすう)


「続いて風よ起これ! 愚昧なる輩に熱風を浴びせよ!」
張角
(ちょうかく)


「あー。敵に妖術使いがいるようだな。
こりゃ勝負にならねえわ。オレは逃げるんで、後はよろしく」
孫堅
(そんけん)


「そ、孫堅どこに行く!? この名族を置いて逃げる気か!?」
袁紹
(えんしょう)


「オレはともかく、兵がおびえちまったら戦にならねえよ。
お前らも早く逃げろ。じゃあな」
孫堅
(そんけん)


「そうかそうか、火は熱いか! 恐ろしいか!
ならばお詫びに水を進ぜよう。洪水よ全てを押し流せ!」
張角
(ちょうかく)


「う、うろたえない! 名族はうろたえない!
名族は退かぬ! 全軍、後ろに向かって突撃しろ!!」
袁紹
(えんしょう)


「我らの勝利だ! 教祖様バンザーーイ! 黄巾バンザーーイ!」
波才
(はさい)



官軍 陣地


盧植
(ろしょく)

官軍の名将



「助かったぞ、朱儁、鄒靖。
お前たちが来てくれなければ全滅していたところだった」
皇甫嵩
(こうほすう)


「なあに、お安い御用だ。それより妖術使いをどうする?
あれをどうにかしなければ戦いにならんぞ」
朱儁
(しゅしゅん)


「だが、対抗しようにも我が軍には妖術使いはいない。
孫堅も逃げたきり戻らないし、戦力も不十分だ。
……どうだ、ここは盧植の力を借りようじゃないか」
鄒靖
(すうせい)


「盧植だと? しかし名族の記憶するところ、あやつは皇帝陛下の勘気を被り、謹慎しているはずだ」
袁紹
(えんしょう)


「あいつは相手が陛下だろうと誰だろうと、平気でずけずけ物を言うからな。
しかし官軍で最も頭が切れるのは盧植だ。あいつなら妖術を破る手立てを知っているに違いない。
何進大将軍に取りなしてもらい、盧植をつれてこよう」
鄒靖
(すうせい)


「…………というわけで、私が担ぎ出されたわけか。
まあ、謹慎を解いてくれた恩くらいは返そう。
要するにその妖術使いをどうにかすればいいんだな」
盧植
(ろしょく)


「誰か、官軍に協力してくれる妖術使いでも知っておるのか?」
皇甫嵩
(こうほすう)


「そんな都合のいい知り合いはいない。
だが、妖術などたやすく打ち破れる人材には、心当たりがある。
そいつを北から呼ぼう」
盧植
(ろしょく)


「き、北だと? 盧植、まさかお前…………」
朱儁
(しゅしゅん)



官軍 陣地


董卓
(とうたく)
丁原
(ていげん)

官軍の将軍

董卓の副将


「フハハハハハ! 吾輩に目をつけるとは、都にも少しは物の道理がわかるヤツがいると見えるな。
よかろう、黄巾賊など吾輩の騎馬軍団が蹴散らしてくれる!」
董卓
(とうたく)


「や、やはり盧植が呼んだのは『北の魔王』の異名を取る董卓だったか……。
こんなヤツを招き入れるとは、盧植は何を考えているのだ」
朱儁
(しゅしゅん)


「あぁん? 吾輩の悪口を言ったのはどいつだ。お前も氷人形にしてやろうか!?」
董卓
(とうたく)


「ウホッ、魔王様。仲間割れをしても疲れるだけです。
怒りは黄巾賊に向けましょう」
丁原
(ていげん)


「これで私の役目は終わったな。それじゃあ都に帰らせてもらおう。
董卓、後は頼んだぞ」
盧植
(ろしょく)



官軍 兵舎


「おーい、盧植先生!」
劉備
(りゅうび)


「おお、劉備じゃないか。どうしたお前その格好は。
官軍になんか入ったのか? お前らしくもない」
盧植
(ろしょく)


「まあいろいろとあってな。義勇軍で戦ってるんだ。
でも心配はいらんぞ。ほれ、この通り頼もしい弟が二人もおるんじゃ」
劉備
(りゅうび)


「……………………」
関羽
(かんう)

「だから誰が弟よ! あたいは鄒靖のヤツが褒美を弾むって言うから、しかたなく手伝ってるだけよ。
そこにアンタたちがのこのこついてきただけじゃないの」
張飛
(ちょうひ)


「あー、事情はよくわからんが、劉備。
悪いことは言わん。逃げろ」
盧植
(ろしょく)


「は?」
劉備
(りゅうび)


「その……なんだ、説明すると面倒だから、手短に言う。
官軍からすぐに離れろ。洛陽の都にも当分は近づくな」
盧植
(ろしょく)


「は、はあ……。先生がそう言うなら、そうするけど……」
劉備
(りゅうび)


「官軍の、都の中からどうにかしようと、いろいろ考えたんだがな。
面倒になった。だから、一番乱暴な手を使うことにした。
私も都を去ってのんびり暮らすさ。じゃあな、劉備に弟さん。達者で生きろよ」
盧植
(ろしょく)


「わけがわからないわねあの人……。
盧植将軍っていえば官軍の中でも有名人だけど、あんな変人だったのね。
劉備、アンタにそっくりじゃないの。
……いや、アンタが盧植にそっくりなのね」
張飛
(ちょうひ)


「はっはっはっ、なんせわしの師匠じゃからな。
そういうわけで張さん、関さん。
逃げようか」
劉備
(りゅうび)


「はあっ!? なにアンタ、盧植の言うこと鵜呑みにしてんのよ。
ち、ちょっと待ちなさいってば! あたいはまだ鄒靖に褒美ももらってないのよ!!」
張飛
(ちょうひ)


「いつだって盧植先生の言うことに間違いはないんじゃ!
ほれほれ、全力で逃げるぞ!」
劉備
(りゅうび)


「……………………」
関羽
(かんう)



洛陽の都 北門



「戯志才君、盧植は黄巾賊に対抗するため、誰を呼んだと思う?」
曹操
(そうそう)


「曹操、お前はあいかわらず人が悪いな。
そうやってわざわざ私に何か聞く時は、いつも自分の考えがある時だ。
また私の答えを聞いて小馬鹿にしようって魂胆だろう?」
戯志才
(ぎしさい)


「戯志才君、きみの被害妄想にも困ったものだな。僕はそんな悪人じゃないよ。
……まあ、たしかに僕にも考えはある。
盧植が呼ぶのは、きっと董卓だよ」
曹操
(そうそう)


「董卓だと? あの魔王を手元に呼ぶというのか。
そんなことをしたらどうなるかわかってるのか」
戯志才
(ぎしさい)


「黄巾賊だけじゃない。都が滅びるね」
曹操
(そうそう)


「…………」
戯志才
(ぎしさい)


「盧植もそれをわかってるさ。わかっていて董卓を呼んだんだ。
戯志才君。これから忙しくなりそうだね……」
曹操
(そうそう)






かくして盧植が呼び寄せた、北の魔王・董卓。
勝つのは魔王か、それとも張角か。
空前絶後の戦いの幕が開く……。




〇〇四   黄夫まさに死すべし