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三 国 志

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〇一七   曹操危機一髪





平原(へいげん)


「おいおい、話が違うじゃないか張さん。
孔融(こうゆう)が取りなしてくれたから、勅使を殴ったことは不問になったんじゃなかったのか?」
劉備
(りゅうび)


「取りなしてくれたから、平原(へいげん)の県令を罷免されるだけで済んだのよ。
本来ならその首が胴から離れてたんだからねアンタ」
張飛
(ちょうひ)


「…………チッ」
関羽
(かんう)


「何よその『そんなことならもっと殴っておけばよかった』って舌打ちは!
アンタ関帝様のくせに発言がいちいち危険なのよ!」
張飛
(ちょうひ)


「それより張さん、関さん。早く旅支度をするんじゃ」
劉備
(りゅうび)


「旅支度? でも公孫瓚(こうそんさん)は罷免に呆れて受け入れてくれないと思うわよ。今度は誰を頼る気なの?」
張飛
(ちょうひ)


「誰かを頼ったりなんてせんぞ。徐州(じょしゅう)へ助っ人に行くんじゃ!」
劉備
(りゅうび)


「徐州ってアンタまさか……曹操に攻められてる陶謙(とうけん)の助っ人に行くつもり!?
よしなさい。曹操は最近になって大軍を手に入れたのよ。死ぬわよ」
張飛
(ちょうひ)


「張さんと関さんがいるのに死ぬわけないじゃろ。
それとも張さんは曹操ごときに負けるほど弱かったんかのう?」
劉備
(りゅうび)


「フフン。そりゃ曹操ごとき敵じゃないけどさ。
でもちょっと数が……ああ、いいわよもう。アタイも学習したさね。
どうせアンタや関羽は勝手に突っ走るんでしょうよ。付き合ってやるわよ!
まったく、助っ人に行くなんてすっかり味をしめちゃってさあ……」
張飛
(ちょうひ)



譙(しょう)


「それじゃあ荀彧君、留守は頼んだよ」
曹操
(そうそう)


「はいはい。大船に乗ったつもりでお任せ下さい。
……しかし殿、ご無理はなさらないで下さいね」
荀彧
(じゅんいく)


「何の話だい」
曹操
(そうそう)


「青州黄巾軍を取り込んだとはいえ、まだ編成も満足にできていません。
戯志才(ぎしさい)殿との約束のため、一刻も早く洛陽(らくよう)の都に上がりたいというお気持ちはわかりますが――」
荀彧
(じゅんいく)


「顔も知らない君が戯志才の名を出すな」
曹操
(そうそう)


「は、はい! 差し出がましいことを申しました!」
荀彧
(じゅんいく)


「……行ってくる」
曹操
(そうそう)


「それこそ無理な話だ荀彧。留守番になったメンツを見てみろ。
徐州討伐に良い顔をしてない奴ばっかりだ」
夏侯惇
(かこうとん)


「ワシは別に反対してないがのう」
程昱
(ていいく)


「まだ青州黄巾軍への屯田の割り振りもできちゃいない。
いくらなんでも遠征は急な話だ」
韓浩
(かんこう)


「殿はああ見えて焦っています。
早く自分の力を天下に示して、洛陽に攻め上がりたいのでしょう」
荀彧
(じゅんいく)


「だが俺たちが何を言おうと耳を貸しやしないだろう。
お前も聞いただろ。戯志才と、呼び捨てにしてやがったぜあいつ。
戯志才は曹操にとって特別な存在なんだろうよ」
夏侯惇
(かこうとん)


「殿がそこまで思い入れた男か。会ってみたかったのう」
程昱
(ていいく)


「……殿が焦りから隙を見せたら、その隙を埋める。
我々にできることは、それだけでしょうな」
荀彧
(じゅんいく)



徐州(じょしゅう)


「はっはっはっ。さすがは曹操軍、我が軍の前線をたやすく突破したそうです」
糜竺
(びじく)


「ほっほっほっ。やはりお強いのう。我々では歯が立たんか」
陶謙
(とうけん)


「お、恐れながら笑い事ではないかと……」
曹豹
(そうひょう)


「殿! 初めて援軍に応じてくださる方が来られました。劉備殿という方です」
孫乾
(そんけん)


「劉……備? はて、どなたじゃろうか」
陶謙
(とうけん)


「この陣形を布いたのは誰だあっ!!」
張飛
(ちょうひ)


「ひいいいいいい!!」
曹豹
(そうひょう)


「ここに来るまでに見てきたけどアンタらの陣形は全くなっちゃいないわね!
ちょっと図面持って来なさいよ! アタイが直してやるわ!」
張飛
(ちょうひ)


「き、貴殿が劉備殿、であるかな?」
陳珪
(ちんけい)


「アタイは張飛! 後ろのひょろ長いのが劉備、うすらでかいのが関羽よ。
いい、まず右翼の陣はもっと北寄りに、左翼の陣は少し下がり気味に展開させんのよ。そんで――」
張飛
(ちょうひ)


「………………」
劉備
(りゅうび)


「………………」
関羽
(かんう)


「………………」
陶謙
(とうけん)



陳留(ちんりゅう)


「hsdiukls;::;jhdkj!?」
呂布
(りょふ)


「たしかにミスター曹操は父を殺されました。しかし民を巻き込むのは許せません!
誰かが彼にそれはいけないことだと言わなければならないのです。
もし誰もそれができないならば、私がその役目を果たしたいと考えます」
陳宮
(ちんきゅう)


「ま、まあまあ落ち着きたまえ呂布殿。ほれ、酒でも飲みなさい。
徐州で曹操軍が略奪を働こうがどうしようが、我々には関係ないでしょうに」
張超
(ちょうちょう)


(お、おい弟よ。どうして呂布が我々を頼ってきたのだ?
そしてどうしてこんなに激怒しているのだ?)
張邈
(ちょうばく)


(そ、そんなことは私が聞きたいですよ!
だいたい兄上が名士を気取ってやたらめったら人をもてなすから、呂布が頼ってきたんでしょうに)
張超
(ちょうちょう)


「gjkaksdal;;::ldjfdskkll!!」
呂布
(りょふ)


「私は紳士です。弱いものの味方です。いつもそうありたいと願っています。
ミスター張邈、私に三千の兵を貸して下さい。私はミスター曹操を倒します」
陳宮
(ちんきゅう)


「し、しかし、そ、曹操と私は同盟を結んでいるのだぞ」
張邈
(ちょうばく)


「おうおう張邈さんよ! うちの大将が頭を下げてんだぜ。
三千でも三万でも四の五の言わずに出すのが道理だろーが!
オラ、ちょっと裏までツラ貸せや」
張遼
(ちょうりょう)


「張遼、無理強いをするな。我々は世話になっている立場なん――」
高順
(こうじゅん)


「ヒイイィィィィィィィ!!
か、か、貸すとも! 全軍を呂布殿に貸す、貸しましょう!」
張邈
(ちょうばく)


「……まあ、張邈殿がぜひにとおっしゃるなら、そう致そうか」
高順
(こうじゅん)


「FXCKIN! FXCKIN! FXCKIN!」
呂布
(りょふ)


「私はミスター曹操と戦います。そして彼には後悔してもらいます。
酷い行いをしたこと、そして私を怒らせたことをね」
陳宮
(ちんきゅう)


「あ、兄上……もしかして我々は取り返しのつかないことに頭を突っ込んでしまったのでは……」
張超
(ちょうちょう)



徐州 西部


「……実に不思議だ。一晩で陶謙君の陣が見違えるように堅牢になった。
まるで指揮官が昨夜のうちに代わったようだね」
曹操
(そうそう)


「援軍が加わったんじゃないのか?」
鄒靖
(すうせい)


「君たち青州黄巾軍を恐れて、誰も陶謙君を助けようなんて考えていないよ。
それに兵の数は昨日から全く増えていない。優秀な軍師が突然現れたのかな。
まあいい、郭嘉君。対策を教えてくれ」
曹操
(そうそう)


「袁術(えんじゅつ)」
郭嘉
(かくか)


「ああ、袁術君が僕たちのほうに援軍を申し出てるそうだね。
ていのいいことを言って、徐州に版図を拡大したいだけだろう」
曹操
(そうそう)


「劉繇(りゅうよう)」
郭嘉
(かくか)


「なるほど、劉繇君は揚州(ようしゅう)に赴任するはずが、袁術君に横取りされて、
やむなく西の曲阿(きょくあ)に駐屯しているんだったね。
劉繇君を支援して袁術君を攻めさせれば、徐州どころじゃなくなるだろう。

袁術君はそれでいいとして、陶謙君はどうする?」
曹操
(そうそう)


「正攻法」
郭嘉
(かくか)


「多少は陣形がマシになったとはいえ、兵力差を埋めるほどではないか。
わかった、正攻法でじっくりと攻めるとしよう」
曹操
(そうそう)


「曹操のダンナ! 留守番の荀彧から急報だ!
張邈と張超が呂布と組んで攻めてきたってよ!」
于禁
(うきん)


「呂布だと」
鄒靖
(すうせい)


「僕らがこうして大々的に徐州を攻めていれば、反対勢力が立ち上がってくるとは思っていたけど、そうか呂布君か。
想像以上の大物が針にかかったようだね」
曹操
(そうそう)


「段階的」
郭嘉
(かくか)


「ああ、陶謙君の新しい軍師においそれと背中を見せる訳にはいかない。
郭嘉君、ここは君に任せるから段階的に撤退してくれ。僕は手勢を率いて呂布君を迎撃に戻るよ。

徐州侵攻と最強の男の撃破、この二つの報が僕の名をあまねく天下に広めてくれるだろう」
曹操
(そうそう)





かくして最強の男・呂布と乱世の奸雄・曹操は激突する。
黒山賊10万を平らげた呂布は、青州黄巾軍30万も蹴散らしてしまうのか?
それとも曹操の智謀は最強の男の武勇も封じ込めるのか?




〇一八   強襲!人中の呂布