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三 国 志

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〇二〇   曹操の帰還





徐州(じょしゅう)


「わしは反対じゃな!」
劉備
(りゅうび)


「…………」
張飛
(ちょうひ)


「だって考えてもみい。
呂布はこれまで丁原(ていげん)、董卓、袁紹、張超(ちょうちょう)と主君を変え、その誰もが死んどるんじゃ」
劉備
(りゅうび)


「いや、袁紹殿は無事だ」
高順
(こうじゅん)


「董卓にいたっては自ら斬り殺してるんじゃぞ。そんな危ない奴を信用できるもんか!」
劉備
(りゅうび)


「……fhjasaslasjfl7jl98kxz」
呂布
(りょふ)


「ミスター劉備が疑うのも当然です。私の主人は多くが命を落としました。
しかしそれは偶然です。ミスター董卓は別ですが、それは彼が紳士ではなかったから殺したのです。
あなたが紳士であれば、私は決して裏切ることはないでしょう」
陳宮
(ちんきゅう)


「しかしじゃのう」
劉備
(りゅうび)


「お黙り劉備。判断するのは徐・州・刺・史であるアタイよ。
だいたい呂布の目の前でべらべら本人の悪口言うなんてどんな神経してるのかしら」
張飛
(ちょうひ)


「…………」
劉備
(りゅうび)


「まあ、劉備の意見にはアタイもだいたい賛成よ。呂布、アンタのことは信用できないわ。
でも……」
張飛
(ちょうひ)


「うっ」
成廉
(せいれん)


「ひっ」
郝萌
(かくぼう)


「んぐっ」
張遼
(ちょうりょう)


「ほら、アタイっておせっかいな性格でしょ。困ってる人は見過ごせないのよねえ。
いいわ、受け入れてあげる。まとめて面倒みてあげるわよ」
張飛
(ちょうひ)


「ち、張さん。何かいま目が妖しく光っとったぞ」
劉備
(りゅうび)


「何のことかしら? さあさ、歓迎の宴会を開くわよ。んふふ。今夜は寝かせないからね」
張飛
(ちょうひ)


「…………」
関羽
(かんう)



洛陽(らくよう)城外


「ええい、あんな焼け残りの都をなぜ落とせぬのだ! かかれ! かかれ!」
李稚然
(りちぜん)


「焼け落ちたとはいえ、かつての都の防備を甘く見られては困る。迎え撃てい!」
士孫瑞
(しそんずい)


「ヘイカ、マモル、オレ、クニニ、カエル!」
於夫羅
(おふら)


「野郎ども適当にかかれー」
楊奉
(ようほう)


「見よ! これぞ武人の奥義なり!」
徐晃
(じょこう)


「ま、また徐晃が命令を無視して暴れてやがる。
退け! 俺が怪我したから退け!」
楊奉
(ようほう)


「楊奉殿はまた撤退したか。しかし陛下は私が守る。
我が君がさみしい時はあと少し付き合うのだからな」
張楊
(ちょうよう)


「くそっ。張楊め、あいかわらず言ってることはわからんが見事な奮戦ぶりだ」
郭汜
(かくし)


「このままではラチが開かぬ。かくなる上は……。
今だ、誰も見ていない。死ね、士孫瑞!」
董承
(とうじょう)


「ぐわっ!!」
士孫瑞
(しそんずい)


「中心的人物のお前を討てば、張楊らの結束にヒビが入るはずだ」
董承
(とうじょう)


「董承……ついに本性を現したな。ずっとお前を警戒していたぞ」
士孫瑞
(しそんずい)


「だがもう手遅れだ。誰も私の裏切りには気づいていない。
城門を開き、李稚然らを招き入れてやる」
董承
(とうじょう)


「あれを見よ……手遅れなのはお前たちの方だ」
士孫瑞
(しそんずい)


「な!? あ、あれは……」
董承
(とうじょう)


「これが乾坤一擲の戦いだよ。全軍突撃だ! 逆賊を討ち陛下を救い出すんだ!」
曹操
(そうそう)


「おうっ!!」
夏侯淵
(かこうえん)


「行くぞ!」
夏侯惇
(かこうとん)


「うおおおおおおっ!!」
曹仁
(そうじん)


「い、いつの間に曹操軍を呼び寄せたのだ。私は聞いておらんぞ!?」
董承
(とうじょう)


「だから言ったろう、お前を警戒していたと。そんな重要なことを話すものか。
曹操さえ来ればお前たちの野望はおしまいだ。へ、陛下……どうかご無事で……ぐふっ」
士孫瑞
(しそんずい)


「謀ったな士孫瑞! こうなったら私自ら陛下を……」
董承
(とうじょう)


「董承殿、陛下に何用だ」
徐晃
(じょこう)


「じ、徐晃。なぜお前がここにいる? そこをどけ、陛下に急用なのだ」
董承
(とうじょう)


「武人の勘が告げている。お主は信用できんと。通りたくば力ずくで押し通れ!」
徐晃
(じょこう)


「董承! もうこれ以上は無理だ。あんたとの陰謀がバレる前に俺はずらかるぜ。じゃあな!」
楊奉
(ようほう)


「な、なんてことだ……」
董承
(とうじょう)


「董承」
献帝
(けんてい)


「へ、陛下……!」
董承
(とうじょう)


「お前には聞きたいことがたくさんある」
献帝
(けんてい)


「…………」
董承
(とうじょう)



洛陽の都


「戯志才……帰ってきたぞ。この洛陽に」
曹操
(そうそう)


「殿、こちらにいらっしゃいましたか。
李稚然、郭汜らは長安へと退却しました。また彼らと内通していた楊奉も逃げ出したとのことです」
荀彧
(じゅんいく)


「わかった。夏侯惇君、夏侯淵君、程昱(ていいく)君を長安へ進撃させてくれ。
陛下には僕から報告しよう。まずはご挨拶に伺わないとね」
曹操
(そうそう)


「わかりました」
荀彧
(じゅんいく)


「それと……すまないな荀彧君。いろいろと気苦労をかけてしまった。
もう大丈夫だよ。戯志才との約束は果たしたんだ。彼のことはもう考えない。
僕には君という新しい戯志才、いや張子房(ちょうしぼう)がいるんだからね」
曹操
(そうそう)


「あはは。私のような者を伝説の軍師・張子房になぞらえてくれるなんて身に余ります」
荀彧
(じゅんいく)



長安(ちょうあん)

鍾繇
(しょうよう)
李通
(りつう)

長安の官吏

長安の役人



「はあ、はあ、長安はもう目の前だ。なんとか逃げ切れたな」
李稚然
(りちぜん)


「曹操め、この恨みは必ず晴らすぞ」
郭汜
(かくし)


「あれー? 長安の前に軍隊がいるけど、誰かなー?」
董白
(とうはく)


「おやおや、逆賊どもがのこのこと姿を現したようじゃのう」
鍾繇
(しょうよう)


「しかし長安はもう我々が占拠しました。あなた方に帰る場所はありませんよ」
荀攸
(じゅんゆう)


「な、何者だ!」
李稚然
(りちぜん)


「通りすがりの正義の味方ってヤツだ。お前たちの首を手土産に陛下と曹操のもとへ向かおう」
李通
(りつう)


「こ、こいついつの間に――ぎゃあああああ!!」
郭汜
(かくし)


「ば、バカな。董白様! 急いで董白様を逃がすんだ!
お、俺様がこんな所で死ぬはずがああああああッ!?」
李稚然
(りちぜん)



洛陽の都


「お前が曹操……であるか」
献帝
(けんてい)


「はい陛下。お会いできて光栄です」
曹操
(そうそう)


「朕は董卓、そして李稚然らによってお飾り同然にされてきた。
だから正直に言って、お前がすぐには信用できない。
曹操、お前は私をどうするつもりなのだ?」
献帝
(けんてい)


「どうするつもりもありません。
逆に聞きましょう。陛下、あなたはどうしたいのですか?」
曹操
(そうそう)


「え……?」
献帝
(けんてい)


「あなたは皇帝陛下なのです。この国で最高位に在るお方なのです。
僕たちは、あなたの思うままに動くだけだ」
曹操
(そうそう)


「ち、朕は……これまで、何一つとして思うままに動けなかった。
なあ曹操、教えてくれ。朕はどうすればよいのだ?」
献帝
(けんてい)


「そうですね。まずは外に出てみるのはいかがでしょうか。
これまで陛下は洛陽と長安を行き来してきただけでしょう。
僕らがいる限り洛陽にはいつでも戻れます。
この曹操がお供しますから、もっといろいろな所へ足を向けてはみませんか」
曹操
(そうそう)


「そ、それはいい! 曹操、朕を連れていってくれるか」
献帝
(けんてい)


「それではまずは僕の故郷のへご案内しましょう」
曹操
(そうそう)



長安 郊外

龐徳
(ほうとく)
馬岱
(ばたい)

馬騰の腹心

馬超の従弟


「えーん。えーん。また負けたー。
おじい様もパパも李稚然もみんな負けちゃったー」
董白
(とうはく)


「むむ? 息子よあれを見ろ。こんな所で少女が一人で泣いておるぞ」
馬騰
(ばとう)


「物騒だね父ちゃん。保護してあげないと。
――ねえ君、お名前は? お父さんお母さんはどうしたの?」
馬超
(ばちょう)


「ぐすん。あたしは董白だよー。
パパもママもおじい様も部下の人もみんな死んじゃったんだよー」
董白
(とうはく)


「なんてことだ……ッ! もう心配いらないよ。
この馬超が君のことを守ってみせる!」
馬超
(ばちょう)


「本当にー? じゃあおじい様たちの仇も討ってくれる?
呂布や曹操を殺してくれるー?」
董白
(とうはく)


「!? 呂布や曹操がこんないたいけな少女の家族を……」
馬騰
(ばとう)


「父ちゃん! 馬超はいま怒りに燃えているよ!
この子のために今すぐ呂布と曹操を討ち果たしに行こう!」
馬超
(ばちょう)


「おう! よくぞ言った息子よ!」
馬騰
(ばとう)


「殿、若殿、お待ちあれ。いくらなんでも我々だけで攻め上がるのは無謀というものだ」
龐徳
(ほうとく)


「ならば国に戻り兵を集めるぞ!」
馬騰
(ばとう)


「呂布はともかく曹操は皇帝陛下を擁している。表立って歯向かうことはできない。
戦うならば、まず陛下を曹操から切り離すべきだ。
……それよりも先に、この娘を保護すべきだろう。見れば疲れ果てているようだ」
龐徳
(ほうとく)


「ぬうう。確かにそうだな。よし、国に帰り陛下を曹操のもとからお救いする計画を立てるぞ!」
馬騰
(ばとう)


「……龐徳、いつも済まんなあ。お前がいなけりゃワイら四人だけで曹操と戦わされるところだったで」
馬岱
(ばたい)


「いいえ、殿や若殿の真っ正直さは尊重すべきものです。
時と場合により歯止めを掛けること、それが吾の役割だと考えます」
龐徳
(ほうとく)


「あいかわらず堅っ苦しいなあ。ま、お前がいてくれてワイは感謝してるんやで。それだけは覚えとってな」
馬岱
(ばたい)


「ありがたきお言葉に存じます」
龐徳
(ほうとく)


「……ほんまに堅っ苦しいな」
馬岱
(ばたい)





かくして曹操は都に入り、覇権への足掛かりを手に入れた。
逆賊・李稚然らは討たれ、曹操の覇道を脅かすものはないかに見えた。
その一方、南では超新星が輝きだそうとしていた。




〇二一   孫策の逆襲