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三 国 志

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〇四六   長坂の戦い





長坂(ちょうはん)

晏明
(あんめい)
夏侯恩
(かこうおん)

曹操の将

曹操の将



「自分としたことが不覚ッス。劉備先輩を見失ったッス……。
他のみんなも散り散りになって逃げてるみたいッスね」
趙雲
(ちょううん)


「そこのお前! 名のある武将と見たぞ! 首を取って手柄にしてやる!」
晏明
(あんめい)


「あ、孫乾先輩がいるッス。おーい孫乾センパーイ!」
趙雲
(ちょううん)


「ぎゃああああああ!!」
晏明
(あんめい)


「おお趙雲、無事でしたか。劉備様がどちらに行かれたか見ていませんか?」
孫乾
(そんけん)


「面目ない。自分も探してるところッス……」
趙雲
(ちょううん)


「孫乾! 趙雲! 劉備様の奥方が若君を抱いてあっちへ逃げていったのを見た者がいるそうアル」
麋芳
(びほう)


「若君が! わかったッス。助けに行くッス!」
趙雲
(ちょううん)


「おっと、待ちな。俺は夏侯惇の弟・夏侯恩だ!
劉備の妻と息子だと? 見逃すわけにはいかんな!」
夏侯恩
(かこうおん)


「そういえば張飛先輩が向こうで奮戦してるって敵の兵士たちが噂してたッス」
趙雲
(ちょううん)


「ぐはああああああッ!!」
夏侯恩
(かこうおん)


「もしかすると劉備様の退路を守るために戦っているのかもしれませんね」
孫乾
(そんけん)


「なるほど! 奥方と若君を助けたら、自分もそっちに向かうッス」
趙雲
(ちょううん)


「お、おい趙雲。アナタがいま片手間に倒した相手、すごい剣を持ってるアル」
麋芳
(びほう)


青釭の剣
(せいこうのけん)


「これは……そういえば聞いたことがあるッスよ。夏侯惇の弟は曹操に気に入られてて、
名剣を与えられたとかなんとか。たしか青釭(せいこう)の剣と言ったッス」
趙雲
(ちょううん)


「そいつはもうけたアルな!」
麋芳
(びほう)


「ウスッ。この剣で血路を切り開くッスよ!」
趙雲
(ちょううん)


「我々は敗残兵と合流しながら逃げます。趙雲には若君たちを頼みましたよ」
孫乾
(そんけん)



長坂 曹操軍




「チッ……。曹仁の兄貴と合流したのはいいが、大混乱してるじゃねえか」
曹純
(そうじゅん)


「劉備は民を煙幕にして逃げているようだな。彼にそんな頭があるとは思えない。
徐福もいないのに誰が知恵を付けたのだろうな」
賈詡
(かく)


「それも民を盾にするなんざ義の人として売っている劉備にしては、らしくない策だ。
意外と厄介な野郎が味方してるのかもしれんぞ」
曹純
(そうじゅん)


「賈詡! 劉備の妻と息子を発見したと一報があったぞ。
俺はそっちに向かうから軍を頼む!」
張繍
(ちょうしゅう)


「はりきってるな張繍は。
……賈詡、俺もちょっと離れるから後を任せるぜ」
曹純
(そうじゅん)


「どちらへ行かれるのですかな?」
賈詡
(かく)


「劉備に知恵をつけた野郎は、必ずこの戦場のどこかに潜んでいる。
そして裏で手を打って、この混乱を助長させてるんだ。
そうでもないと、五千ぽっちの劉備軍にここまでかき回されるわけがねえ」
曹純
(そうじゅん)


「慧眼だな。小生もそう思う。
……だが危険な相手だぞ。くれぐれも気をつけられよ」
賈詡
(かく)


「あんたらしくもない心配はやめてくれ。
性根の悪い奴が優しくすると、そいつはすぐに死ぬのが相場だ。早死にするぜ?」
曹純
(そうじゅん)


「なるほど。肝に銘じておこう」
賈詡
(かく)



長坂 趙雲

淳于導
(じゅんうどう)
王威
(おうい)

曹操の将

劉表の旧臣



「ほっほっほっほっほっ」
淳于導
(じゅんうどう)


「あっはっはっはっはっ」
糜竺
(びじく)


「…………なにをしてるんスか糜竺先輩」
趙雲
(ちょううん)


「見ての通り、はりつけにした糜竺様に当たらないよう、
ギリギリのところに短剣を投げる遊びをしています」
淳于導
(じゅんうどう)


「あっはっはっ。いいところに来てくれたね趙雲。
もう笑うしかなくて困っていたよ」
糜竺
(びじく)


「……死にかけてる時くらいもっと焦ったほうがいいッスよ」
趙雲
(ちょううん)


「おや? ワタクシの遊びの邪魔をなさるおつもりですか?
そんな悪い子にはおしおきが必要ですねえええ!」
淳于導
(じゅんうどう)


「糜竺先輩の大物っぷりには驚かされるッス。どうしたら先輩はあわてるんスか?」
趙雲
(ちょううん)


「ぎえええええええっ!!」
淳于導
(じゅんうどう)


「いえいえ、これでも冷や汗をかいていますよ。さすがにあわてました」
糜竺
(びじく)


「あれで冷や汗で済むなんてやっぱりすごいッス!
――おや、誰か向かってくるッス! 気をつけてください」
趙雲
(ちょううん)


「あなたはたしか、劉備様の家臣の方ですね。我々は敵ではありません」
伊籍
(いせき)


「劉表様の家臣だった王威と伊籍だ。
劉表様の跡を継いだドラ息子があっさり曹操に降伏したのが不満で、お前らについて来たんだが――。
いや、そんなことよりこれを見てくれ」
王威
(おうい)


阿斗
(あと)


「若君!!」
趙雲
(ちょううん)


「やはり劉備様の御子息でしたか。先ほど、瀕死の御婦人に託されました。
御婦人は残念ながら……」
伊籍
(いせき)


「そうッスか……。若君だけでも無事でよかったッス……」
趙雲
(ちょううん)


「見つけたぞ! 劉備のガキはそこか!」
張繍
(ちょうしゅう)


「くそっ、ここは俺に任せて逃げろ!」
王威
(おうい)


「邪魔だ!」
張繍
(ちょうしゅう)


「ぐわあああっ!!」
王威
(おうい)


「王威先輩! 傷は浅いです! しっかりしてください!」
趙雲
(ちょううん)


「ぎゃああああ!! ば、馬鹿な……」
張繍
(ちょうしゅう)


「き、気休めはよせ。これは深手だ。
お、俺のことはいい……。早く劉備様のもとへ……」
王威
(おうい)


「センパーーイ!!
……先輩の遺志は自分が継ぐッス。絶対に若君は守りぬくッスよ!」
趙雲
(ちょううん)


「劉備様は東へ向かっているようです。我々では若君を守れません。頼みましたよ趙雲」
糜竺
(びじく)


「ウスッ!」
趙雲
(ちょううん)



長坂 曹操軍




「あの男はいったい何者だ?
百万にもなろうという我が軍の中を、まるで無人の野を行くようだ」
高覧
(こうらん)


「兵士たちの話によると、趙雲というらしい」

焦触
(しょうしょく)


「あれが趙雲か。公孫瓚(こうそんさん)のもとにいた男だな。
武勇に優れているとは聞いたがこれほどとは……」
高覧
(こうらん)


「お、おい。まさか戦う気か?
あいつに何人の名のある将が斬られてると思ってんだ」

焦触
(しょうしょく)


「劉備軍を撃破しろという命令を受けている。
それに武人の端くれとして、あれほどの猛者とは手合わせをしてみたい」
高覧
(こうらん)


「そ、そうか。劉備軍は十分に撃破してやっただろうから、命令には十分応えたろ。
俺はあいつと戦うのはごめん被るぜ」

焦触
(しょうしょく)


「承知した。ならば軍は任せたぞ。
――趙雲! 俺と戦え!」
高覧
(こうらん)


「劉備センパーイ! 困った。どこもかしこも敵だらけで道に迷ったッスよ……」
趙雲
(ちょううん)


「ぐわあああ! ふ、不覚……ッ!」
高覧
(こうらん)


「こ、高覧を振り返りもせずに……! な、なんなんだあいつは……」

焦触
(しょうしょく)


「こうなったら誰か捕まえて、道案内させるしかないッスかね……」
趙雲
(ちょううん)


「待てい!」
??
(??)


「!?」
趙雲
(ちょううん)


「戦場は命のやり取りをする場……。友を失うのもまたさだめ。
だがこの想い、人それを『復讐』という」
??
(??)


「何者ッスか!」
趙雲
(ちょううん)


「お前たちに名乗る名はない! トルネードキック!」
張郃
(ちょうこう)


「ちょうどいい所に来たッス。ちょっと道案内して欲しいッス」
趙雲
(ちょううん)


「! こ、こいつ俺の攻撃をかわしたばかりか、同時に反撃してきた……ッ」
張郃
(ちょうこう)


「アンタ強いッスね。自分の槍を受け止めたのは今夜初めてッスよ。
じゃあ剣ならどうッスか?」
趙雲
(ちょううん)


「くっ! 俺が防戦一方だと!?
だが見切ったぁッ! お前の弱点はその無意識にかばっている腹だ! さては古傷が――」
張郃
(ちょうこう)


阿斗
(あと)


「あんまり大声出さないで欲しいッス。若君が怖がるッス」
趙雲
(ちょううん)


「まさか赤子を胸に抱いたまま戦っていたとはな……」
張郃
(ちょうこう)


「あれ? やめるッスか? アンタとはもっと手合わせしたいッスのに」
趙雲
(ちょううん)


「この張郃、赤子に向ける刃は持たぬ」
張郃
(ちょうこう)


「……張郃先輩ッスね。その名前、覚えておくッス」
趙雲
(ちょううん)


「次に会った時はその首いただく。さらばだ! トォッ!」
張郃
(ちょうこう)



長坂 曹操軍




「劉備軍は夏侯惇将軍らによって撃破されました。しかし肝心の劉備の行方はわかりません。
また敵将の趙雲によって、多くの将が討ち取られたようです」
荀攸
(じゅんゆう)


「張繍君や高覧君がやられたそうだね。とんだ隠し玉を持っていたものだ」
曹操
(そうそう)


「東の長坂の吊り橋に張飛が陣取り、我が軍の侵攻を食い止めているそうだ。
おそらくその先に劉備がいるのだろう」
劉曄
(りゅうよう)


「そうとわかればこっちのものだ! 吊り橋を目指すぞ!」
王朗
(おうろう)


「あせらなくてももう夏侯惇君を向かわせているよ。
……だけど張飛君が孤軍奮闘しているという情報が入ってからずいぶん経つ。
なにか悪い予感がするね」
曹操
(そうそう)



長坂 吊り橋

夏侯傑
(かこうけつ)

曹操の将



「アタイの目の黒いうちはここを通しゃしないわよ!!!」
張飛
(ちょうひ)


「うおおっ!? じ、地面が崩れ――うわああぁぁぁぁぁぁぁ……」
夏侯傑
(かこうけつ)


「ち、張飛の咆哮で崖が崩れたぞ! 夏侯傑が谷底に落ちちまった……」
侯成
(こうせい)


「そんな馬鹿なことがあるものか。単に足場がもろかっただけだ」
鄒靖
(すうせい)


「この吊り橋ではどうしても一対一になる。張飛を一対一で破るのは不可能に近いな」
満寵
(まんちょう)


「矢を射かけて、万が一吊り橋を支える綱を切ってしまったら、我らも渡れなくなる。
クックックッ……厄介なことだ」
朱霊
(しゅれい)


「てめえらいつまでグズグズしてやがる! これ以上張飛に構うな!」
夏侯惇
(かこうとん)


「おお、夏侯惇将軍。丞相から迂回しろという命令が出ましたか?」
満寵
(まんちょう)


「違う! 張飛はおとりだ! 劉備はこの先になんていやしねえ。別の針路を取ってやがった!」
夏侯惇
(かこうとん)


「チッ。まんまと張飛にいっぱい食わされたな」
何儀
(かぎ)


「…………マジで?」
張飛
(ちょうひ)


「……張飛も知らなかったみたいですな」
満寵
(まんちょう)


「これも諸葛亮のしわざね! ああ、そうよ! アンタは吊り橋があるって言っただけだもんね!
勝手に解釈して糞真面目に吊り橋を守ってたのはアタイよね! 全部アタイの先走りよ!
でも殺す! 諸葛亮殺す!」
張飛
(ちょうひ)


「な、なんかむちゃくちゃ怒り狂ってるぞ。
とにかくあいつは相手にしなくていいんだよな。
じゃあさっさと引き上げて――。んん? なんだお前は?」
侯成
(こうせい)


「サーセン。ちょっと道開けてくださいッス」
趙雲
(ちょううん)


「ぐわああああっ!」
侯成
(こうせい)


「て、敵だ! 敵がまぎれ込んでいたぞ!」
何儀
(かぎ)


「張飛先輩! 無事でよかったッス!」
趙雲
(ちょううん)


「あぁん? いいところに来たわね趙雲。
諸葛亮を殺す手伝いをしなさいよ」
張飛
(ちょうひ)


「そ、それはいくら先輩の頼みでもちょっと……。
そ、そうだ、若君を助けたッス。早く劉備先輩にお渡しするッスよ」
趙雲
(ちょううん)


「そうね。劉備と合流しないことには諸葛亮を殺せないもんね。
さっさとこんなところからはおさらばするわよ!」
張飛
(ちょうひ)


「逃がすな! 追えッ!」
朱霊
(しゅれい)


「フン、しつこい男は嫌われるわよ」
張飛
(ちょうひ)


「吊り橋を落とされたか……。まあいい、劉備の居場所はつかんでいる。追うぞてめえら!」
夏侯惇
(かこうとん)



長坂 劉備




「とうとうわしの居場所がバレてしもうたようじゃな。敵がどんどん増えとるぞ」
劉備
(りゅうび)


「せっかく諸葛亮が時間を稼いでくれたのに、劉ちゃんの馬が遅いから追いつかれるんじゃ」
簡雍
(かんよう)


「わはは。馬が遅いんじゃない、わしの騎乗が下手なんじゃ。
遅いなんて言ったら的盧(てきろ)さんがへそを曲げちまうぞ」
劉備
(りゅうび)


「劉備か。こうして敵味方に分かれて戦場で会うとは不思議な縁だな。
だが手加減はしない。宴の始まりだ!」
鄒靖
(すうせい)


「劉備はそこか! 覚悟しやがれ!」
何儀
(かぎ)


「わわわ、青州黄巾軍じゃ! 誰か迎撃してくれい!」
劉備
(りゅうび)


「迎撃しようにも将がおらんぞ。たぶんこの中で一番強いのは劉ちゃんだ。
一番マシなのがって意味だけどな」
簡雍
(かんよう)


「わしには軍師だけじゃのうて将も足りないんじゃのう……」
劉備
(りゅうび)


「そんなことはない! 兄者を救うためなら我はどこへなりと駆けつける!
……と、父がいれば言ったことでしょう」
関平
(かんぺい)


「か、関平さん!」
劉備
(りゅうび)


「お迎えに上がりました。この先に父が船団を用意して待っています。
後は我々にお任せください!」
関平
(かんぺい)


「関羽将軍に比べたらちぃとばかし頼りないでしょうが、我慢しておくんなせえ」
周倉
(しゅうそう)


「美しい兄弟愛だよなあ! 行くぞみんな!」
廖化
(りょうか)


「劉備殿には拙者がお供いたす。さあ、こちらへ」
陳到
(ちんとう)


「わはは。勘違いしとったぞ。今のわしには将もたくさんいるんじゃなあ……」
劉備
(りゅうび)


「雑魚が増えようが関羽がいなければどうということはない! どけ!」
何儀
(かぎ)


「おっと、ここは通さねえぜ。
んん? 誰かと思えば黄巾賊の手長猿じゃねえか。まだ生きてやがったのか」
裴元紹
(はいげんしょう)


「そういうお前はハゲか。手長猿はお前の主人のほうだろう」
何儀
(かぎ)


「俺の名前を略すな! それにあいにくだったな。
俺の主人はヘタレの劉備じゃなくてかっちょいい関羽のほうだぜ!」
裴元紹
(はいげんしょう)


「たいした忠誠心だな。お前は長く生きすぎた。ここで死ね」
何儀
(かぎ)


「長く生きすぎてんのはお互い様だろうが!」
裴元紹
(はいげんしょう)


「どうしたハゲ! 腕が落ちたな!」
何儀
(かぎ)


「ちっきしょう……! 盗賊暮らしの長かった俺と、仮にも曹操軍にいたヤツとじゃ鍛え方が違うか……。
ぐわああああっ!!」
裴元紹
(はいげんしょう)


「昔のよしみだ。苦しまずに死ね。次は劉備、お前の――」
何儀
(かぎ)


「やっと追いついたッスよ! 劉備センパーーイ!」
趙雲
(ちょううん)


「ぎゃああああああ!!」
何儀
(かぎ)


「おお、龍さん! 盛り上がってた一騎討ちを片手間にブチ壊しながら登場なんてさすがじゃな!」
劉備
(りゅうび)


「そんなことより若君を助けてきたッスよ。でも残念ながら奥方は……」
趙雲
(ちょううん)


「そうか。あいつは駄目じゃったか……。だが龍さんが無事でよかったぞ。
わしのガキなんかのために危険な目にあわせて済まんかったのう」
劉備
(りゅうび)


「先輩…………」
趙雲
(ちょううん)


「そんなことより諸葛亮はどこ!? あのウチワ馬鹿を出しなさいよ!」
張飛
(ちょうひ)


「ち、張さんもおったんか。亮さんなら別行動じゃ。
どっかから戦場をかき乱すとか言っとったが……」
劉備
(りゅうび)


「あっそう。じゃあ帰ってきたら殺すわ」
張飛
(ちょうひ)


「追い詰めたぞ劉備!」
夏侯惇
(かこうとん)


「しつっこいわね! アタイのケツをいつまで拝む気よ!
ほら劉備、さっさと関羽のとこまで走るわよ!」
張飛
(ちょうひ)



長坂 高台

??
(??)

諸葛亮の腹心



「ようやく船に乗ったか。他の者もだいたい収容できたようだな。
クックックッ。まったく世話の焼けることだ」
諸葛亮
(しょかつりょう)


「高笑い中すみません御主人様、敵です」
黄月英
(こうげつえい)


「ここにいたか黒幕サンよ……。
一見てんでばらばらに逃げ回ってるように見える民衆の中に、部下をまぎれ込ませて操ってたようだな。
あるいは俺たちの追撃を邪魔させ、あるいは迷う劉備の部下どもを先導させってな。
そんなことをするためには戦場を俯瞰できる位置にいるはずだ。たとえばこんな高台にな」
曹純
(そうじゅん)


「ほう、よく見抜いたな曹純。褒めてやろう」
諸葛亮
(しょかつりょう)


「……俺のことまでご存知ってわけか。
誰だか知らねえが、生かしておいたら大きな災いになる。死んでもらうぜ」
曹純
(そうじゅん)


「クックックッ。陳腐な言葉だ。
お返しに余も陳腐な言葉をくれてやる。死ね」
諸葛亮
(しょかつりょう)


「はい。殺すです」
黄月英
(こうげつえい)


「おっと、周りをよく見るんだな! あんたらはすっかり包囲されてるぜ」
曹純
(そうじゅん)


「……愚かな」
諸葛亮
(しょかつりょう)


「なに?」
曹純
(そうじゅん)


「つくづく愚かな。
曹純よ、貴様程度の小物まで知っている余が、貴様程度の小物の考えを読めぬと思ったか?」
諸葛亮
(しょかつりょう)


「なっ!? 包囲部隊が全滅しているだと……ッ」
曹純
(そうじゅん)


「死ね」
諸葛亮
(しょかつりょう)


「ぐあああああっ!!
こ、この男は……曹操、様の、障壁に……な……る」
曹純
(そうじゅん)


「殺したです」
黄月英
(こうげつえい)


「フン。小物にしてはよくやったほうだな。曹……なんと言ったかなこの者は。
もう忘れてしまった」
諸葛亮
(しょかつりょう)


「曹純です。用が済んだら即忘れるなんてあいかわらず薄情ですね、御主人様」
??
(??)


「死人に興味はない」
諸葛亮
(しょかつりょう)


「生きてる人にも興味が無いくせに。
ところで曹純の包囲部隊を殲滅した僕にお褒めの言葉はないんですか?」
??
(??)


「こんな楽な仕事で報酬を求めるのか? 恥を知れ」
諸葛亮
(しょかつりょう)


「そうです。馬謖は恥を知るです」
黄月英
(こうげつえい)


「黙れ小娘」
馬謖
(ばしょく)


「黙るです長っ鼻」
黄月英
(こうげつえい)


「うるさい。死ね」
諸葛亮
(しょかつりょう)


『嫌です』
黄月英
(こうげつえい)
馬謖
(ばしょく)





かくして劉備は九死に一生を得た。
しかし曹操の勝利は動かず、中華統一はいまや目の前へと迫っていた。
残る強敵は、孫権ただ一人。




〇四七   柴桑会議