龍造寺邸事件

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 龍造寺悟が実家の玄関扉を開けると、危篤だったはずの父が出迎えてくれた。
 「久しいな、悟」
 「……やっぱり仮病か」
 「こうでもしなければ、うぬは帰省せぬからな」
 豪快に笑う父の名は龍造寺ラオウ。北斗の拳の大ファンだった両親に名づけられ――たはずはなく(彼が生まれたのは月光仮面の全盛期だ)、定年後に読んだ北斗の拳に感銘を受け、65歳にして改名したのだ。
 ちなみに元の名は龍造寺権太という。
 「まあ待つがいい悟」父は敷居をまたいで帰ろうとする息子を引き止める。
 「うぬの顔が見たくて呼んだわけではない。実は用事があるのだ」
 「顔が見たくて呼んだよりもたちが悪いじゃないか」
 「実は仕事を依頼してやろうと思って呼んだのだ。喜べ」
 「仕事を?」
 「まあとにかく上がるがいい。ユリアも待っている」
 「誰がユリアですか」冷たい言葉を投げかけ、老父の背後から老母が現れた。龍造寺ユリア……ではなく龍造寺リリアンである。龍造寺悟にはさっぱり受け継がれなかった、北欧生まれの彫り深い顔をしかめ、夫をにらみつける。
 「わたしをユリアと呼ぶのはいいかげんやめてください。いい歳をしてわけの解らないことをいつまでも。悟もなにか言ってやりなさいな」
 当然のことながら、龍造寺リリアンは夫の趣味に辟易していた。長年連れ添ってきた夫が突然、自分をマンガのキャラの名前で呼びだしたのだ。呼ぶだけならまだしも「ユリアに改名してくれ」「ユリアもリリアンもたいして変わらぬではないか」と言い出すに及んでは、50年の長きにわたり内助の功を守り続けてきたリリアンもついに堪忍袋の緒が切れた。
 離婚騒動である。ちまたで話題の定年離婚である。しかし北斗で始まった騒動は北斗で終わりを告げた。

 「しょせんラオウとユリアは結ばれぬ運命か……」

 龍造寺ラオウのこの一言にリリアンは切れた。ぶち切れた。むしろ絶対に離婚するものかと心に誓ったのだ。以降、夫婦の間には冷戦が続いている。
 「ここに来る前に、なにか大変な事件に巻き込まれたんですって?」リリアンは細い首をかしげた。
 「ああ、ちょっと向こうの寺で殺人事件に。まあ、そういうの慣れてるから」心配性の母の肩を押し、龍造寺悟は玄関を上がった。その拍子に彼の背後に隠れるようになっていた大神涼子とリリアンの目が合った。
 「あらあらまあまあ」リリアンは息子と大神の顔を見比べた。「いつの間にこんな素敵な方を……」
 「違います。断じて違います」大神は蒼白にした顔を全力で横に振った。
 「初めまして、大神涼子と申します。龍造寺探偵事務所の助手を務めさせていただいております」
 「なるほど、助手か」組んでいた腕をほどき、龍造寺ラオウが右手を差し出す。「ようこそ、マミヤ君」
 「は? マミヤ?」
 呆然とした大神の目の前で夫の手をはたき落とし、リリアンはにこやかに笑った。
 「龍造寺邸へようこそ大神さん、歓迎するわ」



 龍造寺邸――といっても龍の置物もなければ血なまぐさい伝説も残っていない、それなりに大きいだけのただの屋敷である。
 代議士としてそれなりに名をはせた龍造寺権太(当時)がそれなりの財産にものを言わせそれなりに建てた屋敷は、しかしやはりそれなりに豪勢だった。
 「あ、これ」それなりの趣味でそれなりに集めた壺やら掛け軸やらを見まわしていた大神が、居間に飾られた三体の像を指さした。
 「日光東照宮の三猿の像ですよね。見ざる聞かざる言わざる……の……」大神の声が次第に小さくなっていく。銅像の顔を見つめた目が丸くなった。
 「ほう。詳しいではないかマミ……大神君。それはわが龍造寺家に伝わる至宝、三忍像だ」ラオウの説明に大神はますます目を丸くする。
 「サンニン……?」
 三体の銅像はまさしく東照宮の猿さながらに、それぞれ目を耳を口をおさえたポーズをとっているのだが、その顔が明らかに猿ではなかった。ほっかむりをして刀を背負い、どんぐり眼にへの字口……。
 「見ないでござる、聞かないでござる、言わないでござる、機密をあずかる忍びの者の心得を説いた、ありがたき像である」
 「はあ……すばらしいですね」鑑定番組に出すまでもないパチモンだったが、大神は大人の対応を見せた。なんせ相手は初対面、それも上司の父親である。言わないでござる。
 「それで親父、仕事の話とはどういうことだ」紅茶を音立ててすすり、龍造寺悟が片眉を上げる。
 「おふくろの浮気調査でもしたいのか? 逆なら話が解らないでもないが、あのおふくろに限って浮気なんざ――」
 「いや、うぬに探偵活動を頼みたいわけではない。ある者の監視をしてほしいのだ」
 「ある者?」
 「探偵だ。うぬと同じ探偵がこの屋敷にたむろしておる。目には目を歯には歯を探偵には探偵を。うぬには不埒な探偵めを見張ってほしいのだ」
 「監視――ですか」大神は眉をひそめる。似たような依頼が以前にもあった。金持ちは同じようなことを考えるのかもしれない。
 「そんなの追い出せばいいじゃないか」商売熱心ではない探偵が言う。
 「だいたいなんだって探偵なんかがたむろしてるんだよ。議員時代の悪行でもかぎつけられたのか」
 「むう……。さて、どうだろうな。議員たるもの多かれ少なかれ、痛くもない腹を探られるのは宿命というものではないかな。そう、これは宿命の時が来たのであろう」
 「図星かよ」龍造寺悟は鼻からため息をもらした。
 龍造寺ラオウは日本国の伝統にそって、引退後はさる会社の役員に収まっていた。隠居の身とはいえ、かつての悪行をあばかれるのは痛手に違いない。
 「現役のころから反りの合わないヤツがおってな。そやつが送りつけてきおった間者だ。悟が学生の折に使っておった離れにこもっておる」
 「どうして追い出さないんですか」
 「私が置いてあげてるのよ」大神の当然の疑問に、クッキーを運んできた龍造寺リリアンが答えた。
 「下手に追い出してあることないこと騒ぎ立てられるくらいなら、いっそのことよく調べてもらって、あることだけ騒いでもらったほうがいいじゃないの」
 「そういう――ものですか」
 「そういうものよ」涼しい顔でリリアンは紅茶をすする。そういうものではないと否定したいが口に出せないラオウと、無言で口出しをけん制するリリアンの間に気まずい空気が流れる。息子にして鉄面皮の龍造寺悟はいいが、部外者の大神は居心地の悪さをじっくりと味わっていた。
 と、静寂を蹴散らすように遠くからけたたましい足音が響いてきた。
 「あらあらまあまあ悟ちゃん悟ちゃん帰ってらしたのね。帰ってるなら帰ってると教えてちょうだいな。ずっとずっと悟ちゃんに会いたかったのよ」
 40年配とおぼしき和装の美人が、現れるなり機関銃のようにまくしたてた。
 「おひさしぶりです瑠璃おばさん」
 「あらいやだおばさんだなんて、悟ちゃんと2つしか変わらないじゃないの。でも本当に本当におひさしぶりね。おととしのお正月以来かしら? もっとお顔見せてほしいのに悟ちゃんってばつれないんだから。ラオウ兄さんもこう見えてさみしがってるのよ」
 「ごぶさたしています」あわてず騒がず龍造寺悟は応じるが、大神は目を点にしていた。
 色白の細面、黙っていれば和風美人だが、甘ったるい声で悟ちゃん悟ちゃんとポメラニアンでも呼ぶように連呼するせいで、印象を大きく損なっている。
 それにしても30秒足らずで、彼女の名前は瑠璃、龍造寺ラオウの妹で悟にとっては叔母にあたり、年齢は2つ上で甥の悟を溺愛しているということが大神にも伝わったのだから、恐るべき早口である。
 「あらあらあらあら」その彼女が大神に目をとめた。
 「あなたひょっとして悟ちゃんの……いやねえ、そんなことあるわけないわね。だって悟ちゃんみたいな冴えない男にあなたみたいな方がなんて、絶対にありえないわ。さてはあなた、悟ちゃんの助手の方ね。いつも悟ちゃんがお世話になってますわ。あたくし伊集院瑠璃と申しますの。よろしくお願いしますね」
 「……大神涼子と申します」電光石火の疑問、否定、分析、断定だった。ものすごく強引な決めつけだったが、全てが当たっているのだからただものではない。それにしても、龍造寺悟を溺愛しているわりには実に辛辣な、そして的確な評価を下しているようだ。
 「あ、あのー」いつからそこにいたのか、目が細く腰が低く声の小さい男が、申し訳なさそうにわりこんできた。
 「ご歓談のところ申し訳ありません。あ、あのわたくし龍造寺ラオウの秘書を務めております、冷泉(れいぜい)と申します。実はですね、たいへん申し訳ないのですが……」
 「お邪魔するよ」龍造寺家ではわりこみが流行っているのだろうか、サングラスにヘッドホンというあからさまに怪しい男が、冷泉を押しのけて一同の前に現れた。
 いやらしい笑みを浮かべながら、龍造寺悟と大神を興味深げに見まわし、
 「おたくらが探偵さんかい。龍造寺家の御曹司ってわりにはぱっとしないね。おっとこれは失礼、俺はフリージャーナリストの廬山(ろざん)ってものだ。探偵? そんな下品な言葉で俺を呼ばないでくれないか」
 廬山は大仰な身ぶりで肩をすくめて見せた。しぐさもしゃべりかたも、いちいち鼻につく男だった。
 「それはそうと、取材の成果が今夜にでもまとまりそうでね、依頼主にはいい報告ができそうだよ。龍造寺ラオウさん、漫画遊びができるのも今のうちだよ。まあせいぜいがんばっておくれ、タ・ン・テ・イ・サ・ン」
 悠々と去っていく廬山の背中に、ラオウは塩を袋ごと投げつけた。
 「悟、断じて彼奴を許すでないぞ!」
 「所長、絶対あいつにほえ面かかせましょう!」
 「親父、大神君」熱視線を受けて龍造寺悟は重々しくうなずいた。「やるぞ」



 携帯の電波を探して廊下まで出てきた龍造寺悟は、我那覇からのメールしか来ていない現実に舌打ちした。先日、クラブで知り合った彼女は国へ帰ってしまったのだろうか。フィリピンに。
 「所長、こんなところにいらしたんですか」アルコールで頬を赤く染めた大神涼子が出てきた。両親にすっかり気に入られ、宴会につきあわされていたのだ。
 「すっかりごちそうになりました」
 「そりゃよかった」龍造寺はさりげなく携帯を後ろ手に隠す。「親父は女好きだから、たかるといい」
 「所長と同じなんですね」
 「なにか言ったか」
 「いいえ。それより……」大神は中庭に面した廊下の窓を見る。
 「あれですよね、離れというのは」
 中庭に建てられた小ぶりのプレハブ小屋に、あのフリージャーナリストはこもっている。もともとは龍造寺が大学受験の際に勉強部屋として建てさせたもので、龍造寺が家を出てからは物置となっていた。
 「ラオウおじさまにいろいろとうかがいました。廬山は腕利きの盗聴師だそうです」
 「盗聴師?」
 「ええ。まるでその場で見聞きしていたような詳細な報告書を仕上げると評判です」
 廊下に出てきた冷泉が、二人に気づいておびえたようにのけぞった。見かけどおりの小心者らしい彼は、トランシーバーのような機械を手にしている。
 「なんだいそれは」
 「盗聴器の発見機です。拳王に仰せつかりまして……」ラオウは自分のことを拳王と呼ばせているらしかった。壁や天井に機械から伸ばした棒を近づけながら歩いていく冷泉の背中が、やけに小さく見える。
 「不思議なことに、廬山はろくに部屋から出ないそうなんです」大神は腕を組んで壁にもたれる。
 「家の人になにか聞きまわろうともしないで、一日のほとんどは離れの中で過ごしているとか」
 「そういえばヘッドホンつけて歩いてたな。もう盗聴器を仕掛け終わって、あのヘッドホンを通じて悠々と聞いてるんじゃないのか」
 「でも冷泉さんがもう一週間も探し回ってるのに、盗聴器を発見できないそうですよ」
 「ふーむ」龍造寺も腕を組み、大神をまねて壁にもたれた。しかし頭の中を占めているのはフィリピンから来た彼女のことだった。だいたい父の依頼も無茶なのだ。廬山を監視しろと言われても、肝心の相手は離れにこもりきりだし、いったいなにをすればいいのやら。
 「今夜にも報告書がまとまると言ってましたね」大神がつぶやく。
 「でもこれじゃ手も足も出ませんよ」
 「離れに踏み込んで絞り上げればてっとり早いんだが」
 「ラオウおじさまは、手荒なまねをしたくないと言っていました」
 「ずいぶん平和主義の拳王だな。まあ、腕ずくで解決したら、逆に自分の首を絞めることになるか」
 「廬山を……」
 そのとき、おなじみの絶叫が邸内を駆けめぐった。
 辟易した顔で大神がため息をついた。
 「最終回までワンパターンですね。進歩がないわ」
 「噂の離れから聞こえたようだな。とにかく行ってみよう」



 探偵コンビが到着すると、離れの玄関ドアの前には、ラオウとリリアンが立っていた。
 ラオウが激しくドアを叩いているが、なにも反応はない。
 「むう、鍵がかかっておるな。悟、扉を破るぞ」
 「気が早すぎる。鍵はどこにあるんだ」
 「拳王! いまの悲鳴は……」緊急事態でも忠実に呼び名を守る冷泉があわてふためきながら現れた。うしろには瑠璃がつづいている。
 「あらあらよかったわ。みんなそろってるみたいね。みんな無事なのね」
 「ふむ。どうやら離れの中で悲鳴を上げたのは盧山めに違いないな。冷泉、合鍵を持ってまいれ」
 ラオウは胸ポケットから趣味の悪い金色の鍵を取り出し、冷泉に手渡す。
 「手さげ金庫の中だ。解るな」
 「はい!」
 冷泉は5分ほどで戻ってきた。ラオウに命じられ、震えた手で鍵を開ける。
 「命令だ。まずお前が入れ」臆病な拳王は秘書に命じた。背中を押された冷泉が、たたらを踏みながら室内に入っていく。
 もつれる足で部屋の中ほどまで進み、床に転がった障害物につまずき盛大に転んだ。障害物は誰もが予想したとおり盧山の体だった。
 倒れたまま悲鳴を上げる冷泉を押しのけ、龍造寺悟と大神が真っ先に死体に駆け寄った。盧山は――。

 右目がくりぬかれ、右の耳が切り取られていた。

 「どうした悟、状況を報告せんか」玄関口に立ったまま入ろうともしないラオウがわめく。
 「親父、ちょっと質問だがこのあたりで眼球くりぬき魔か、耳切り取り魔が夜な夜な出没していないか」
 「そんな都合のいい殺人鬼がいるものですか。それより……」かがみこんだ大神は、床に転がった耳を、いつも持ち歩いているピンセットでつまみ上げた。
 「これ、変じゃないですか。切り口が一致しないように見えます」
 「切り口が?」悟は絶命した盧山の右耳がついていたと思われるあたりと、大神がつまんだ右耳を見比べる。
 「言われてみればそんな気もするね」
 「それだけじゃありません。眼球も見てください」大神はついで眼球もつまみあげた。百戦錬磨の彼女はそのくらいのことは平然とやってのける。
 「黒目の真ん中を錐かなにかで貫かれています」
 「そのようだな」豪胆ではなく神経が図太いだけの悟も、臆せず眼球をしげしげと眺める。
 「死因はショック死かな。痛そうだ」
 「所長、気づきましたか? 目と耳が切られているのに、ほとんど出血がないんです」
 貫かれた眼球と、切り取られた耳にはかなりの量の鮮血が付着しているが、盧山の顔面にはさほどの出血が認められない。
 「目と耳を切られたのは、別の現場なのか……? だが、この離れは施錠されていたし、悲鳴が上がってすぐに我々は駆けつけた。被害者は離れから出ていない。――そうなると」
 悟は足もとの冷泉を振り返る。
 「冷泉君、犯人は君だ」
 「え!? え!?」
 「親父の右腕として長年働いてくれた君がこんなことをしでかすなんて、実に残念だよ……」悟は短い腕を苦労して後ろ手に組み、ゆっくりと部屋を歩きだした。
 大神は彼を無視して、手袋をはめた手であちこち探っている。
 「現場は密室、被害者も犯人も出入りは不可能。その状況で決行できる殺人方法は数少ない。その中でも今回とりうる手段はたった一つ。早業殺人です」
 「早業殺人?」瑠璃が甲高い声で復唱した。大神は相手にもしていない。
 「そう、冷泉君は扉を開け部屋に入り、盧山に駆け寄ると即座に目玉をくりぬき、耳を切り取ったのです」
 「でも悟ちゃん、それっておかしくない? だって盧山さんが悲鳴を上げたのは、あたくしたちが部屋に飛び込むよりずっと前なのよ」
 「そう、ある意味では殺人よりも辛い事実を私は告白しなくてはいけません。冷泉君と盧山は共謀していたのです」
 「共謀?」今度はリリアンが合いの手を入れた。机を調べ終わった大神は、壁をあちこち叩いている。
 「二人が共犯だったと考えればなんの不思議もありません。あの悲鳴はなんらかの合図だったのでしょう。合図を聞きつけた冷泉君はすかさず――」
 「それはいったいなんの合図だ? 悲鳴を上げて吾らを呼び寄せ、あげくの果てに殺されて、盧山めになんの得があったのだ」
 「だ、だからそれは……」ラオウのつっこみに悟はしどろもどろになる。大神は床を踏み鳴らしている。
 「つまり、冷泉君は裏切ったのです。なんらかの合図に従って駆けつけた冷泉君は、なんらかの打算によりなんらかの裏切りを……」
 「所長、そろそろいいかしら?」モップの柄で天井をつつきながら大神が割り込んだ。
 「所長のわけのわからない推理は一言で否定しましょう。冷泉さんは必殺仕事人でも超A級スナイパーでもありません。あの一瞬で目玉と耳を切り取るのは不可能です。あと出血の問題も忘れていますね。この場で早業殺人をしたなら、いまごろ冷泉さんは血まみれです」
 「……………………」
 「さて、くだらないことはやめて、そろそろ市民の義務を果たしましょうか」
 「市民の義務?」首をかしげるラオウに、大神は愛想のいい笑顔を送りながら言った。
 「おじさま、警察に電話していただけますか?」



 1時間後、向かいの山から出張してきた警察は、大神が調べていたとおり、離れには抜け穴など他の出入り口がないことを確認した。
 広い邸内から被害者の血痕を探す作業は難航していたが、ひとつだけ奇妙な異常が発見された。
 居間に飾られた三忍の像のうち、「見ないでござる」と「聞かないでござる」が壊されていたのだ。

 また離れの机の引き出しから、離れの鍵が見つかり、また解剖により盧山は即死だったと解り、これによって外で傷を負った被害者が自ら鍵を閉め密室を構成したという可能性も消えた。
 悲鳴が上がったとき、たまたま一緒にいた龍造寺悟と大神を除き、他の誰にもアリバイはなかった。
 盧山がまとめていた報告書は残されており、押収した署内では報告書をめぐり活発な動きがあるらしい。
 なお、必死の捜査にもかかわらず、邸内から盗聴器や監視カメラの類も全く発見されていないという……。




 さて、ここで(今回は絶対無理だと思いますが)謹んで読者に挑戦する。
 犯人は誰か?
 いかにして犯人は盧山を殺しえたのか?
 この謎は論理的に解くことはできない。真相はこれまでのバカミステリのようなバカトリックである。
 しかし誰もわざわざ小説にしないような、バカな真相を思いつければ――答えにたどりつけるかもしれません。
 そんな物好きな方がいることを祈って、今回も推理を募集したいと思います。
 バカな真相に怒らない、こんな駄文をわざわざ読んでくれる心の広い方は3月18日23時までに、下記メアドまで推理を送ってください。

締め切りました

※迷惑メール対策のため、メアド中の「あ」を「@」に変えてお送りください。

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